2026年10月22日
「音楽性の違い」って、ほんとに音楽性の違い?

バンドが終わるときの理由として、いちばんよく聞く言葉があります。
音楽性の違い。
便利な言葉だけど、これって本当に音楽性の話なんだろうか。20歳の奏(かなで)と、40代後半でバンドに戻ってきたロックおじさんに聞いてみました。
奏「わたしのときは、たぶん違った」
奏「大学でオリジナルをやろうとして、結局そのまま解散したんだけど」
奏「表向きは『方向性が違うから』ってことになってた。でも、たぶん違うんだよね」
奏「ほんとは、みんなの空いてる時間が合わなかっただけだったと思う。バイトがある人、就活が始まった人、サークルのほうが忙しい人。そこが噛み合わないと、そもそも集まれないから」

奏「で、集まれないと、音楽性を確かめる機会もないんだよ。違いが分かるほど、一緒に音を出してないの」
奏「だから『音楽性の違い』って言うとき、ほんとは音楽の話をしてないことがけっこうある気がする」
奏「あのとき、誰も悪くなかったんだよ。ただ、最初に決めておくべきことを決めてなかっただけ。それを言葉にできなかったから、方向性のせいにしたんだと思う」
おじさん「オレは言い合うとこまで行かなかった」
おじさん「オレのバンドはな、そもそも解散って言葉すら出てねぇ」
おじさん「メンバーが就職して、結婚して、だんだん来なくなって、それで終わりだ。自然消滅ってやつだな」
おじさん「音楽性で揉めたことなんか一度もねぇよ。揉める前に、集まらなくなったんだ」
おじさん「若いころは『いつか本気でやろうぜ』って言い合ってた。でもな、『いつか』は来ねぇんだよ。誰も日を決めなかったからな」
おじさん「今になって思うんだが、あれは『音楽性の違い』ですらねぇ。ただの段取り不足だ。もっと格好悪ぃやつだよ」
じゃあ「音楽性の違い」は嘘なのか
そうとも限りません。
奏「途中でハマるジャンルが変わるのは、普通にあると思うよ」
おじさん「オレも昔は速く弾けるのが偉いと思ってたが、今はぜんぜん違ぇしな」
奏「うん。だから嘘ってわけじゃないんだよね。ただ、それだけじゃないってこと」
この言葉の厄介なところは、言いにくいことをまとめて包めてしまうことだと思います。「時間が取れない」「熱量が違う」「正直しんどい」を、全部そこに入れられる。
包んだまま終わるから、次に組むときも同じことが起きる。何が原因だったのか、本人たちにも分からないままだからです。
おじさん「言いにくいことを言わねぇまま終わるってのが、一番もったいねぇんだ」
奏「わかる。言えてたら続いてたかも、って今は思うよ」
組む前に、話しておけること
奏「音楽性そのものは、やってみないと分からない部分があると思う。でも、それ以外は先に話せるんだよ」
音を出す前に決められることのほうが、実は多いということでした。ふたりの話に出てきたのは、このあたりです。
どのくらいの頻度で活動したいか。週1なのか、月1なのか
どこまでやりたいか。ライブに出たいのか、合わせるだけで楽しいのか
お金をどこまで出せるか。スタジオ代、機材、ライブに出るときの費用
いつまで続けたいか。学生のうちなのか、ずっとやりたいのか
奏「これ、最初に聞くと空気が重くなりそうだよね。でも、あとで揉めるよりぜんぜんいいと思う」
おじさん「先に言っとけば、途中で『そんなつもりじゃなかった』が起きねぇからな。オレらはそれで消えたんだ」
奏「募集の文に書いちゃうのが一番早いかも。読んだ時点で合わない人は来ないし、来た人とは最初から話が早いから」
おじさん「なるほどな。……嬢ちゃん、たまにいいこと言うじゃねえか」
奏「たまに、は余計だよ」
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